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「誰かの幸せが、自分の幸せになる」“福祉企業”をつくる、社長の歩みと想い

  • 執筆者の写真: 航 山田
    航 山田
  • 8月2日
  • 読了時間: 5分

更新日:8月20日


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代表取締役 津﨑 武志|作業療法士、精神保健福祉士、介護支援専門員、社会福祉主事、経営学修士(MBA)、二級建築士、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士


ゼロから始まった歩み

最初から福祉の道を目指していたわけではありませんでした。高校卒業後は建築学科で学び、医療・福祉の資格も経験もなかった20代前半。ご縁があって精神科医療の現場で看護助手として働くことになったのが、歩みの始まりです。

 

関わる中で「この仕事、面白いな」と感じたのが、作業療法士を志すきっかけでした。




退院後の「その人らしい暮らし」を支えたい

精神科病院で作業療法士として働く中で、国の方針で「長期入院している患者さんを地域に戻そう」という退院促進事業が始まりました。何年も何十年も病院で暮らしてきた人たちに、いきなり「地域で一人暮らしを」と言っても、それは現実的ではありませんでした。

 

退院を促される患者さんたちは生活力がなく、住まいや仕事もない方々で、「退院後の暮らしをどう支えるか」を真剣に考えざるを得ない日々でした。

 

そんな中、病院が作業療法の活動のために大きな古民家を所有しており、そこに患者さんと一緒に宿泊して洗濯や料理などの日常生活訓練をしたり、バスなどの公共交通機関を利用する訓練をしたり。一緒に笑って、一緒に失敗して。そんな日々の中で、少しずつ自信を取り戻していく姿を見させていただき、沢山のことを教えていただきました。

就労訓練では、作業療法の多様なプログラムを活用したり、病院内に屋台形式の喫茶店をオープンするなど、地域のNPOやハローワークとも連携しながら、一般就労へとつなげる支援を行っていました。

ある利用者さんは、最初はスーパーマーケットのバックヤードで段ボールをたたむ仕事から始まりました。少しずつ信頼を積み重ね、やがて店頭での接客を任されるようになり、ついには正社員として採用されました。その後は本社勤務となり、結婚もされました。

 

一方で、退院促進事業が進む中、私が責任者を務めていたデイケアはその受け皿となり、利用者さんの数が急増していきました。すると、どうしても個別支援が行き届かず、もどかしさや限界を感じるようになりました。

「それなら、自分ができる範囲で本当に届けたい支援をしよう」——そう思い立ったことが、独立・起業へと踏み出すきっかけになったのです。




コロナを乗り越えて。地域で支える力を再構築

デイサービスからスタートしました。毎日のおやつは利用者さんと一緒に手づくりで、入浴は個別対応。リハビリも作業療法士などの専門職が個別リハビリを行っていました。

 

「自分の親を安心して預けられる場所にしたい」という想いで、細部までこだわりました。

 

ですが、2020年以降、新型コロナウイルスの影響で状況は一変しました。感染対策や人手不足、運営の困難が続き、苦渋の決断でデイサービスは閉鎖することになりました。

悔しさもありましたが、その経験を通して「地域の中で支える仕組み」をもう一度見直すことになりました。

 

訪問看護では、医療的なニーズを持つ方が、住み慣れた自宅や地域で安心して暮らせるよう支援しています。

一人ひとりの人生の価値観、思いや希望など"尊厳"を大切にする、「人との関係性」を築くことが大事です。薬の管理や生活リズムの支援だけでなく、対話を重ねることが欠かせません。




トップダウンではなく、現場から創る組織

「誰かの人生の傍にいられる仕事」であること。

私は会社の代表ですが、自分ひとりでは何もできません。今、利用者さん一人ひとりの尊厳を大切にする風土や文化があるのは教えてくださる利用者さんやご家族、働いてくれている人たちのおかげ。

 

働いてくれている人たちが“自分たちの職場”として、利用者さんと向き合い、仕組みを考え、成長してくれたからこそ今がある。

だからこそ、一人ひとりの声が活かされる職場、安心して挑戦できる環境を整えることが私の役目です。

 

評価制度や働き方の改善も、現場からの意見を取り入れて進めています。

自分自身、現場で悩み、試行錯誤してきたからこそ、悩みにも共感できます。

 

介護福祉業界では、働く中で、「理不尽な上下関係」や「不透明な運営」が理由で辞めてしまうケースは少なくありません。

だからこそ、そういったことがなくなり「自分の人生も大切にできる職場」にしていきたいと考えています。




「福祉企業」として、もっと自由に、もっと柔軟に

福祉は、「制度に合わせること」が仕事になってしまいがちです。

でも本来、制度よりも「その人が安心して暮らせること」「目の前の人の尊厳を守るためには何が必要か」が大切なはず。

 

だから、私たちは不動産事業や便利屋事業など、一見すると“福祉っぽくない”事業にも取り組んでいます。

たとえば高齢者や障がい者が住まいを見つけられずに困っていたら、建築や不動産のスキルでサポートできる。

介護保険ではできないことも、民間の知恵と工夫でカバーできる。

 

弊社は自らを「福祉企業」と位置付けています。地域の社会課題に対し、企業として、従業員がきちんと対価を得られる仕事として、その解決に固定概念に囚われないあらゆる手段でチャレンジしていきたいと考えています。

 

「福祉企業」という新しいあり方で、もっと自由に、しなやかに、誰かの尊厳を支える存在でありたいと思っています。




​最後に

大きなことはできないかもしれない。でも、「ありがとう」と言ってもらえる毎日が、ここにはあります。

人が好き。誰かの役に立ちたい。自分の人生も大切にしたい。

そんなあなたにとって、楓庵はきっと、かけがえのない場所になると思います。

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